コピーライターの左ポケット

左のポケットからは
思いがけないものがでてきます
役に立たないけれど捨てられない
自分にだけたいせつなものです

「コピーライターの左ポケット」は
RADIO BERRY-76.4☆FM栃木の
日曜日22時からの番組「柴草玲のイヌラジ」の
小さなコーナーでした
コピーライターがストーリーを書き
柴草玲さんが音楽をつけながら朗読をしてくださり
5年の長きにわたって続けることができました
番組の最終回は2015年3月29日でした
お聴きくださった皆さま、このサイトを訪問してくださった皆さま
ありがとうございました

なお、原稿と音声のみをご覧になりたいかたは
裏ポケットへどうぞ ↓
http://02pk.seesaa.net/



2014年08月24日

細川美和子 2014年8月24日放送

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夏休みの宿題
                           
     細川美和子

1976年の夏休み、
そのスイカのタネは気まぐれに庭に埋められた。
そしてそのまま忘れられた。
ほかの兄弟たちはどこに行ったんだろう?
まっくらな土の中でスイカのタネは考えた。
でもなにも思い浮かばなかった。
包丁で切られ、スプーンでほじられ、土にうめられるまで、
タネが見てきた世界はあまりにすくなかった。
考える材料がなかったのだ。
そこでタネは、眠ることにした。
ひんやりとした土の中、タネはこんこんと眠りつづけた。
でもあるとき、誰かに激しくゆさぶられて目が覚めた。
なんだからまわりの様子が変わっている。
カラダがほとんど、土から飛び出してしまっている。
じりじりと頭の上のほうが熱い。
ああ、あれが太陽か。
かと思えば、激しい雨がタネをうちつける。
大きな黒い鳥がゆっくりと
自分を狙っているのを感じる。
ああ。暗い土のなかで、
眠っていたころがなつかしい。
それよりももっと前、
お母さんの赤いカラダの中で
眠っていたころがなつかしい。
どうしてこんなこわくてさびしい思いを
しなければいけないのか。
タネの頭と胸は、はちきれそうだった。
そして実際、プチっと音がした。
タネは自分がこわれる音を聞いた。
誰かが遠くで拍手している。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:細川美和子
posted by ポケット社 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 番組原稿と音声 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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