コピーライターの左ポケット

左のポケットからは
思いがけないものがでてきます
役に立たないけれど捨てられない
自分にだけたいせつなものです

「コピーライターの左ポケット」は
RADIO BERRY-76.4☆FM栃木の
日曜日22時からの番組「柴草玲のイヌラジ」の
小さなコーナーでした
コピーライターがストーリーを書き
柴草玲さんが音楽をつけながら朗読をしてくださり
5年の長きにわたって続けることができました
番組の最終回は2015年3月29日でした
お聴きくださった皆さま、このサイトを訪問してくださった皆さま
ありがとうございました

なお、原稿と音声のみをご覧になりたいかたは
裏ポケットへどうぞ ↓
http://02pk.seesaa.net/



2014年05月11日

秋永寛 2014年5月11日放送

akinaga1405.jpg

「イグアナのこと」

           秋永寛

「ガラパゴスのリクイグアナは、生態系の頂点に君臨しているのです」
と、そのリクルートスーツの男は語り始めた。

「我がもの顔で島を歩き、個体数はどんどん増え続け、
 島中のサボテンを食べ尽くすに至ったのです。
 食料は尽きました。
 途方にくれ、海を眺めると、
 海草がゆらゆらと彼らの胃袋を誘うように身をくねらせているのでした。
 海は危険です。
 周辺の海流はとても強く、流されるともう島には戻れない。
 しかし、生き延びるには、他に選択肢がありませんでした。
 必死で岩にしがみつき、海草を食べ始めたのです。
 流されてなるものか、むしゃむしゃ。俺たちは生き延びるんだ、むしゃむしゃ。
 生命への執着は、イグアナにとある変化をもたらすことになりました。
 爪が硬く鋭くなったのです。
 海流に流されないよう、岩にしがみつける爪をもつ、ウミイグアナの誕生です。
 リクイグアナとウミイグアナ。
 自分に無いものを持つ相手に惹かれるのは、世の常なのでしょう。
 美しい浜辺で、リクイグアナとウミイグアナは結ばれました。
 数ヶ月後に生まれたのは、陸で生活しつつも爪が発達したハイブリッド種のイグアナ。
 地上のサボテンを食べるだけでなく、幹に爪をたて、
 木の上に繁る葉っぱを食べることができるようになったのです。

 こうしてイグアナはどんなピンチも、自ら変化することで生き抜いてきたのです」

そこまで一気に話すと、
面接官の前で彼は一呼吸つき、そして、続けた。

「どんなピンチもチャンスに変える、イグアナのような臨機応変さで、
 ワタクシも御社に貢献できたらと思っております」

最後は、こじつけでしかなかったけれど、なかなか立派な自己PRだった。
なるほど、、、と面接官は採点シートになにやら書き込んだ。
就活生は、自信に満ちた様子でドアを出ていった。

次の春。
その会社に、彼の姿はなかった。

代わりに、一匹のイグアナが新入社員として採用された。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/

タグ:秋永寛
posted by ポケット社 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 番組原稿と音声 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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