左のポケットからは
思いがけないものがでてきます
役に立たないけれど捨てられない
自分にだけたいせつなものです
「コピーライターの左ポケット」は
RADIO BERRY-76.4☆FM栃木の
日曜日22時からの番組「柴草玲のイヌラジ」の
小さなコーナーでした
コピーライターがストーリーを書き
柴草玲さんが音楽をつけながら朗読をしてくださり
5年の長きにわたって続けることができました
番組の最終回は2015年3月29日でした
お聴きくださった皆さま、このサイトを訪問してくださった皆さま
ありがとうございました
なお、原稿と音声のみをご覧になりたいかたは
裏ポケットへどうぞ ↓
http://02pk.seesaa.net/
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コピーライターの左ポケット
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2014年04月12日
花見

祖師谷公園といえば、世田谷一家殺人事件。
現場となった一軒家は公園の敷地に入ってすぐのところに、
いまだにありました。
屋根や外壁は長年の風雨によってすさみ、
玄関の前には、なぜか電話ボックスのような箱が。
たまにそこに警官が立っていることがあるそうです。
現場保存かなにかのためだそうです。
事件から10年以上もたつのに、
この家のなかは発生した日の夜のままなんですねえ。ぞっとします。
先週の4月5日の土曜日。
その家を越えて公園の奥へ100mほど進むと桜が咲く一帯があり、
中山夫妻が主催する花見はその下で行われました。
多少なりとも事件の影響が残っているかもしれないと
心配していたのですが、そんなことはぜんぜんなく、
あたりは地元の人たちで賑わっておりました。
われわれのテーブルというかなんというかシートの上も、
中山さんがつくってくれた料理のおかげで、
桜の下にも桜が咲いたみたいに華やかで、
それをつまみにヤクルトスワローズファンの人は、
前日の小川のピッチングについて語り、
釣りが趣味の人たちはカレイがいかに鈍い魚かを語り、
口喧嘩がすきな人たちは口喧嘩に花を咲かせていました。
口喧嘩が好きな人たちというのは、もちろん中山夫妻ですね。
頭の回転が速くて語彙も豊富な人同士の口喧嘩は、
聞いていて楽しいし勉強にもなります。
夫幸雄さんがしゃべる(話幸)。そのなんでもない日常の話に、
妻佐知子さんが強引なまでにひっかかりポイントを
見つけてつっかかっていく(怒佐)。一応なにか言い返す幸雄さん(返幸)。
聞く耳持たない佐知子さん(不耳佐)。謝る幸雄さん(謝幸)。
許さない佐知子さん(不許佐)。笑ってごまかす幸雄さん(笑幸)。
このように、二人の口喧嘩は、
話幸→怒佐→返幸→不耳佐→謝幸→不許佐→笑幸
という構造になっておりまして、
これを桜の下じゃなくてステージの上でやったら、
漫才になるのかもしれません。
幸雄さんはいつもだいたいなにかしゃべっています。
とてもためになることを教えてくれることもあります。
だけど、いつもぼくは酔っぱらっているからその内容を覚えていないのが残念です。
すごいのは佐知子さんです。いかなる話題でも、
それが幸雄さんから発せられたものであるならば、
強引なまでにそこにひっかかりポイントを見つけて瞬時に反論するのです。
その反論が、言葉巧みだから幸雄さんは笑うしかない。
ここに広告業界の一端を見たなとぼくは思いました。
クライアントからオリエンがきたら、
たとえそれが内容のないつるつるしたものでも、
クリエーティブの名刺を持ってる人なら、
どこにひっかかりのポイントを見つけてプレゼンしなくてはならないわけですけど、
中山夫妻の口喧嘩を見ていると、
そんなオリエンとプレゼンのやり合いをしているように感じるわけです。
幸雄さんによる日常会話というオリエンに対して、
怒りを燃料に頭を高速回転させ佐知子さんは瞬時にプレゼンし返す。
オリエンした覚えもないのに幸雄さんは突然プレゼンされて
たいへんだなとは思いますが、
こうやって脳を活性化し合っているのだからまあいいことなんでしょう。
そんな二人による即興漫才をみんなで3時間ばかり眺めていたら、
日も陰り風も冷たくなってきたのでお花見はお開きとなりました。
残念ながらぼくは参加できませんでしたが、
中山家に場所を移して二次会もあったようです。
これは、幸雄さんにこっそり教えてもらったことです。
一家殺人事件があった当時、
近所に住む中山夫妻も警察から事情聴取を受けたそうです。
その時、
妻佐知子さんは夫幸雄さんを指差して警官に向かってこう言ったそです。
「私にはアリバイがありますが、この人にはアリバイないですから、
しっかり調べてくださいね」
言われた警官はこの忙しいときに面倒くさい夫婦に
出くわしたもんだという顔をしたそうです。
ま、そりゃそうですよね。
事情聴取に行ったら漫才見させられたわけですから。(う)
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