コピーライターの左ポケット

左のポケットからは
思いがけないものがでてきます
役に立たないけれど捨てられない
自分にだけたいせつなものです

「コピーライターの左ポケット」は
RADIO BERRY-76.4☆FM栃木の
日曜日22時からの番組「柴草玲のイヌラジ」の
小さなコーナーでした
コピーライターがストーリーを書き
柴草玲さんが音楽をつけながら朗読をしてくださり
5年の長きにわたって続けることができました
番組の最終回は2015年3月29日でした
お聴きくださった皆さま、このサイトを訪問してくださった皆さま
ありがとうございました

なお、原稿と音声のみをご覧になりたいかたは
裏ポケットへどうぞ ↓
http://02pk.seesaa.net/



2014年11月23日

中山佐知子 2014年11月23日放送

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社長の結婚

        中山佐知子

社長が結婚するというニュースは
やがて新聞の一面に載る予定だが
実はそれ以前にも数人の人だけが知っていた。

その数人のうち半分くらいの人が
それぞれ身内や親しい人に情報を漏らし、
さらにそれを知らされた人がまた誰かにしゃべった。

やがて、社長の結婚なら社長本人から聞いたよという人が
あらわれはじめた。
どうやら社長本人が秘密を守りきれず
いろんな人にしゃべりはじめたようだった。

こうして、この国の首都の一部では
早くもお祝い気分が盛り上がりはじめた。

飲み屋が満員になったのは
あやかり婚を狙う社員が夜な夜な合コンが企画するせいだった。
社長の結婚パレードを内緒で知らされた人々は
テレビ中継のカメラになんとか映ろうとして
目立つ色のタキシードやオレンジ色のカツラを買いに行った。

築地では昆布が品切れになっていたが、
昆布は結納に使用されることから
水面下の結婚ブームが疑われた。

折しもボーナスの時期だった。
社長と会ったことがない人までも風潮に流され
ボーナスを手にすると買い物に走った。
結婚式のスピーチバイブル、
お部屋で社長の結婚を祝うためのスパークリングワイン。
結婚する社長に聞かせたいクラシックのCD。
社長の血液型に近づくための健康食品。

そうか、結婚は景気回復にひと役かうのかもしれない。
社員たちは今更のようにそれに気づいた。

株価はじわじわと上昇をはじめた。
首相はこの勢いに水をさすことを恐れ、
増税の延期を検討することにした。

社長の結婚のおかげで
来年はいい年になるだろう。
ああ、やれやれ。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/


タグ:中山佐知子
posted by ポケット社 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 番組原稿と音声 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする