左のポケットからは
思いがけないものがでてきます
役に立たないけれど捨てられない
自分にだけたいせつなものです
「コピーライターの左ポケット」は
RADIO BERRY-76.4☆FM栃木の
日曜日22時からの番組「柴草玲のイヌラジ」の
小さなコーナーでした
コピーライターがストーリーを書き
柴草玲さんが音楽をつけながら朗読をしてくださり
5年の長きにわたって続けることができました
番組の最終回は2015年3月29日でした
お聴きくださった皆さま、このサイトを訪問してくださった皆さま
ありがとうございました
なお、原稿と音声のみをご覧になりたいかたは
裏ポケットへどうぞ ↓
http://02pk.seesaa.net/
▼
コピーライターの左ポケット
▲
2014年11月21日
出汁
中山さんから荷物が届いた。
大きなダンボールだったけど見かけほどは重くない。
開けると、緑色の筒状のタッパーが入っていた。
フタの直径は30センチくらい。
高さも僕の脛くらいまである。小さな太鼓のようだ。
それが縦に二つ積んであったから、ダンボールは大きくなったのだ。
そのタッパのあるタッパーの丸いふたを開けてみると、
なかは小さな魚の死骸でうめつくされていた。
魚だけにぎょっとした。
これが人間だったら、歴史に残る大量虐殺になる。
その首謀者が中山さんだということになると、
これまでオノヨーコ似のフェイスでラブ&ピースを
世界に発信してきた中山さんの生き様に多大な影響力があるように思えた。
しかし、その悲惨な光景は、とてもうまそうに見えた。
魚の死骸というのは、つまり煮干しのことですね。
中山さんは大量の煮干しを送ってくれたわけです。
タッパーひとつに2キロ、
それが2つだから4キロもの煮干し。すごい量です。
出汁をとれ!と中山さんはおっしゃってるわけです。
他にも乾燥わかめが一袋はいっておりました。
つまり、出汁とわかめでみそ汁をつくんなさい!と
中山さんはおっしゃっておられるわけです。
ぼくはすぐに中山さんに電話しました。
日曜日の朝10時くらいでしたかね。
中山さんはまだ寝起きの声で、
中山さんにしては珍しく朝寝を楽しんでおられたのかもしれません。
「もう届いたの?」
ええ、届きましたとも。ありがとうございました。
「それを寝る前に1リットルの水に30gつけておいたら、
出汁ができるし、朝つけたら夕方にはできるわよ。
今からつければ夕食には間に合うし」
電話を切ったあと、すぐに出汁づくりにとりかかった。
言われた通り水につけると、
煮干したちの体の表面に空気の泡がたくさんついて、
そのうち息を吹き返すんじゃないかと思えて目をそらしてしまった。
ところで煮干しって何の魚なんでしょうかね。
マグロには見えない。クジラでももちろんなさそうだし、
鯖とも違う。ヒラメやカレイほど平べったくもないし、
煮干しで検索するとWikipediaに、「カタクチイワシが一般的」とありました。
カタクチイワシだって。知らなかったな。
今度海の水はしょっぱいの?と聞かれることがあったら、
カタクチイワシから出汁が出ているからだよ、と言ってみよう。
19時くらい。ボウルのなかをのぞいてみると、
触らなくても煮干しが柔らかくなってるのが分かった。
底には、煮干したちのカケラが沈殿している。
そして、午前中はただの水道水だったものがほんのりと色づいていた。
ほおお。これが出汁ですか。
この煮干しの残り湯と言えなくもないものが、料理の基本となるのですね。
「まだ昆布が入ってないけど、うまいのができると思うわよ」という
中山さんの言葉通り、できたみそ汁はうまかった。
出汁がきいてるって、こういうことかと思った。
「出汁」と漢字で書くとどうしても「出光」を思いだしてしまうけど、
全然石油くさくないし、味が濃いというかしっかりしてるというか、
飲み慣れた牛丼の松屋のみそ汁は、
実はあんまりおいしくなかったということが分かった。
わかめと豆腐だけのシンプルなみそ汁だったけど、
徳島産のわかめは、中山さんおすすめのものだけあって、
肉厚でかみごたえがあり、かむたびにじわっとうまい。
噛み慣れた松屋のみそ汁のわかめが、
実はぺらんぺらんだったいうことが分かった。
日本人を40年近くやってきたが、
出汁からみそ汁をつくったのは家庭科の授業以来だった。
やっぱり料理っていうのは、自分でつくってみないと、
どこにこだわりがあるのか分からないものですね。
どこにこだわってるかが分かると、さらにおいしさが増すというかね。
料理に関しては全く分からないですけど、
中山さんにはいいものをもらったということは分かりました。
どうもありがとうございました。(う)
大きなダンボールだったけど見かけほどは重くない。
開けると、緑色の筒状のタッパーが入っていた。
フタの直径は30センチくらい。
高さも僕の脛くらいまである。小さな太鼓のようだ。
それが縦に二つ積んであったから、ダンボールは大きくなったのだ。
そのタッパのあるタッパーの丸いふたを開けてみると、
なかは小さな魚の死骸でうめつくされていた。
魚だけにぎょっとした。
これが人間だったら、歴史に残る大量虐殺になる。
その首謀者が中山さんだということになると、
これまでオノヨーコ似のフェイスでラブ&ピースを
世界に発信してきた中山さんの生き様に多大な影響力があるように思えた。
しかし、その悲惨な光景は、とてもうまそうに見えた。
魚の死骸というのは、つまり煮干しのことですね。
中山さんは大量の煮干しを送ってくれたわけです。
タッパーひとつに2キロ、
それが2つだから4キロもの煮干し。すごい量です。
出汁をとれ!と中山さんはおっしゃってるわけです。
他にも乾燥わかめが一袋はいっておりました。
つまり、出汁とわかめでみそ汁をつくんなさい!と
中山さんはおっしゃっておられるわけです。
ぼくはすぐに中山さんに電話しました。
日曜日の朝10時くらいでしたかね。
中山さんはまだ寝起きの声で、
中山さんにしては珍しく朝寝を楽しんでおられたのかもしれません。
「もう届いたの?」
ええ、届きましたとも。ありがとうございました。
「それを寝る前に1リットルの水に30gつけておいたら、
出汁ができるし、朝つけたら夕方にはできるわよ。
今からつければ夕食には間に合うし」
電話を切ったあと、すぐに出汁づくりにとりかかった。
言われた通り水につけると、
煮干したちの体の表面に空気の泡がたくさんついて、
そのうち息を吹き返すんじゃないかと思えて目をそらしてしまった。
ところで煮干しって何の魚なんでしょうかね。
マグロには見えない。クジラでももちろんなさそうだし、
鯖とも違う。ヒラメやカレイほど平べったくもないし、
煮干しで検索するとWikipediaに、「カタクチイワシが一般的」とありました。
カタクチイワシだって。知らなかったな。
今度海の水はしょっぱいの?と聞かれることがあったら、
カタクチイワシから出汁が出ているからだよ、と言ってみよう。
19時くらい。ボウルのなかをのぞいてみると、
触らなくても煮干しが柔らかくなってるのが分かった。
底には、煮干したちのカケラが沈殿している。
そして、午前中はただの水道水だったものがほんのりと色づいていた。
ほおお。これが出汁ですか。
この煮干しの残り湯と言えなくもないものが、料理の基本となるのですね。
「まだ昆布が入ってないけど、うまいのができると思うわよ」という
中山さんの言葉通り、できたみそ汁はうまかった。
出汁がきいてるって、こういうことかと思った。
「出汁」と漢字で書くとどうしても「出光」を思いだしてしまうけど、
全然石油くさくないし、味が濃いというかしっかりしてるというか、
飲み慣れた牛丼の松屋のみそ汁は、
実はあんまりおいしくなかったということが分かった。
わかめと豆腐だけのシンプルなみそ汁だったけど、
徳島産のわかめは、中山さんおすすめのものだけあって、
肉厚でかみごたえがあり、かむたびにじわっとうまい。
噛み慣れた松屋のみそ汁のわかめが、
実はぺらんぺらんだったいうことが分かった。
日本人を40年近くやってきたが、
出汁からみそ汁をつくったのは家庭科の授業以来だった。
やっぱり料理っていうのは、自分でつくってみないと、
どこにこだわりがあるのか分からないものですね。
どこにこだわってるかが分かると、さらにおいしさが増すというかね。
料理に関しては全く分からないですけど、
中山さんにはいいものをもらったということは分かりました。
どうもありがとうございました。(う)