左のポケットからは
思いがけないものがでてきます
役に立たないけれど捨てられない
自分にだけたいせつなものです
「コピーライターの左ポケット」は
RADIO BERRY-76.4☆FM栃木の
日曜日22時からの番組「柴草玲のイヌラジ」の
小さなコーナーでした
コピーライターがストーリーを書き
柴草玲さんが音楽をつけながら朗読をしてくださり
5年の長きにわたって続けることができました
番組の最終回は2015年3月29日でした
お聴きくださった皆さま、このサイトを訪問してくださった皆さま
ありがとうございました
なお、原稿と音声のみをご覧になりたいかたは
裏ポケットへどうぞ ↓
http://02pk.seesaa.net/
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コピーライターの左ポケット
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2014年10月26日
小松洋支 2014年10月26日放送

脱出
小松洋支
天井で赤いランプが点滅し、サイレンがけたたましく鳴っている。
先ほどの衝撃が、なにかトラブルを引き起こしたに違いない。
コクピットの後ろのドアがひらき、
いつもの滑るような動作で、ロザリンドが入ってきた。
「1分02秒前、小型の天体が左舷をかすめました。
防御センサーにより衝突は回避しましたが、
天体に角(つの)のような突起が出ていたらしく、
それが推進機にぶつかった模様です」
ロザリンドの電子音声は、いつも通り冷静だ。
「推進機能が損なわれたため、退避が必要です。
エマージェンシーカプセルを切り離しますので、至急移動をお願いします」
わたしはロザリンドをじっと見た。
もう型番が古くなったボディは、表面に細かい傷がたくさんついている。
転倒防止装置がまだ外付けになっている時代の、
アーデン社製造のものだ。
わたしたちの任務は、希少ガスのアルゴンを探すことだった。
数えきれないくらいの銀河をめぐった。
母船が探査ポイントに着くと、
わたしたちのようなリトルシップがいくつも飛び出して、
周囲に散らばる星の大気を収集してまわり、母船に届ける。
そんな旅を30年も続けた。
「ロザリンド、お前とはずっといっしょだったな。
危険な目にもずいぶんあったが、
いつもお前の的確な判断で救われた。
お前がいなければ、いまわたしは、ここにはいない」
サイレンが鳴り続けている。
「そんなわたしも、もう70を越えた。
心臓に重い持病がある。
母船に帰ってもそう長くはもたないだろう。
だが、お前は違う。
メンテナンスすれば、まだまだ働ける。
カプセルの収容人数は1名。
乗るのはお前のほうだ」
ロザリンドは、わたしの話を
まるで聞いていなかったかのような応答をする。
「推進力が失われたので、質量の大きな星 Z 13(ゼータイチサン)の重力が
本機を引き寄せ始めています。
エマージェンシーカプセルへの移動をお願いします」
機体が大きく前へ傾く。
「もう一度言う。カプセルにはお前が乗れ。
これは命令だ」
ロザリンドはフリーズしたかのようにしばらく動かなかったが、
やがて向きを変え、のろのろと進み始めた。
わたしは、その後ろ姿を見送っていた。
ドアの前で、ロザリンドはふりむいた。
同時に、金切り声のような音が、サイレンをかき消すほど高くコクピットにこだました。
透明な強化樹脂で覆われたロザリンドの頭に、
非常ランプの赤がちらちらと反射していた。
出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:小松洋支
2014年10月19日
細川美和子 2014年10月19日放送

おにぎりコロコロ
細川美和子
おべんとうばこからとびだして
おにぎりはたびにでた
じぶんをにぎってくれた
おかあさんをさがすたびだ
おかあさんのてはあたたかかった
あつあつのじぶんに
まけないぐらいあたたかかった
あなたはぼくのおかあさんですか?
おにぎりはいのししにきいた
グフグフとにおいをかいで
いのししはいってしまった
あなたはぼくのおかあさんですか?
グヒグヒとにおいをかいで
ヒグマはいってしまった
あなはたぼくのおかあさんですか?
スピスピとにおいをかいで
うさぎはいってしまった
コロコロするのにも
つかれはてたおにぎり
もうのりもほどけ、おこめもほどけ、
そろそろおにぎりでもいられなくなってきた
もうろうとするなか、
さいごのチカラをふりしぼって
おにぎりはきいてみた
あなたはぼくのおかあさんですか?
バクリ
おにぎりはたべられた
バクバクとたべられた
あたたかいおなかのなかでおにぎりはやっと
おかあさんのところにかえってきたことをしった
出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:細川美和子
2014年10月12日
中村直史 2014年10月12日放送

「風の声」
中村直史(なかむら ただし)
父のことを尊敬していた。年をとっても、いつも夢見がちなところがあって、
そこが好きだった。あまり家にいる人ではなかった。知らないうちに、いろん
な場所を旅していて、文学や音楽にもくわしかった。子どもに対して、ああし
ろこうしろと言うこともなかった。そのぶん、諭されたり、アドバイスをして
くれる時は、胸に響くものがあった。ただ、アドバイスといっても、ほんとう
にそれが私へのアドバイスだったのか、それとも独り言を言っていたのかは、
よくわからない。今思えば、私の生きている現実と、父の生きている現実は少
し違ったのかもしれない。父はよくこう言った。「迷った時は、風に聞いてみ
るといい」。風に聞く。意味はわからなかったが、私の胸に響いた。あとは、
こんなこともよく言った。「幸せは、いつだってお前の手の中にある。幸せは
手に入れるものじゃなくて、ただ気づくだけのものなんだ」。月日は流れた。
父ももうこの世にはいなかった。私はたくさんの人生の荒波をこえ、たくさん
の迷いに直面してきた。今日もまた、迷いを抱えた私は、父とドライブした岬
の崖の上に立って、しずかに風の音に耳をすませていた。私は風に語りかけた。
私はこれから、どうすべきだろう?びゅーびゅーと風は崖のうえを吹き抜けて
いく。風の声が私の心の中で響いた。「あるがままに」。風がさらに吹き抜け
る。別の声が心の中にこだました。「世界が奏でる音楽とダンスするんだ」。
私は風に聞いた。「あるがままに?世界の奏でる音楽?」「そう、あるがまま
に。答えはもうキミの中にあるのだから」。私は目を閉じると、風に向かって
答えた。もう・・・もう、そういうオシャレっぽいのはいいから。オシャレっ
ぽくて、もったいぶっていて、少しスピリチュアルな、そしてだいたいは、自
分らしくあればいいみたいな結論の、そういうやつは、もうほんといらないか
ら。俺もう48だから。気づけば私は大声を出していた。デートにきていたカッ
プルが何事かとこちらを見つめている。吹きつづける風に私は大声で叫んだ。
「もっと具体的に!」。風はもう私に答えてはくれなかった。
出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:中村直史
幻の滝の紅葉(栃木の秋 3)

那須高原の駒止の滝は、幻の滝と呼ばれていたそうです。
音はすれども姿は見えず。
滝を見ることができるのは宮内庁管轄の場所だけでした。
いまは展望台(観瀑台)ができ、近くには駐車場もあります。
上下の写真は、FM栃木那須支社長の田辺さんです。
ちょいと無断で借用してきました。
秋の那須高原、素晴らしいですね。

2014年10月05日
こんな寒い晩は新生姜ですね

雨が降って寒い一日でしたね。
最高気温が20℃なかったですもんね。
いまで17℃くらいかな。
熱々の炊き込み飯と味噌汁がうまかったです。
ホットカーペットをつけたら猫が喜びました。
さて、こんな寒い日は新生姜ですよ。
味がさっぱりしているので
夏向きだと思っている人もいるでしょけれど
生姜そのものにカラダをあたためる作用がありますから
寒い日にもいいわけです。
熱々のご飯に刻み込むだけでもいいですよ。
ついでにゴマもふりかけますか。
ゴマもカラダをあたためます。ネギや紫蘇もです。
新生姜にネギ、ゴマ、紫蘇。なんかうまそうな組み合わせですね。
ご飯がおいしくなりそうです。お茶漬けもいいなあ。
ところで、とても簡単な炊き込みご飯風というのがあります。
あくまでも「風」です。炊き込むわけではありません。
まず、鮭缶がありますね。
鮭缶は高いって思ったら鯖缶でもいいんです。鯖缶うまいです。
炊きあがったご飯にほぐした鯖缶と
刻んだネギと刻んだ新生姜を入れて混ぜるんです。
塩はほぐした鯖缶に振っておいてください。
ついでに醤油もじゃっとかけておきます。
これがご飯の塩味になります。
混ぜたらそのまましばらく蒸らします。
熱いうちに食べてくださいね。
生姜とネギで風邪を予防するホカホカご飯です。
寒がりのポケット社長におすすめしたいです(さ)
タグ:岩下の新生姜
2014年10月03日
紅葉の栃木 (栃木の秋 2)

上は奥日光の湯の湖。紅葉がはじまりました。↑

霧降高原の天空回廊はすでに見頃を迎えています。↑

山王林道も負けていません。↑

戦場ヶ原はススキがキレイです。↑

そして、上の写真はRadioBerryの田辺さんが撮影した那須の姥ヶ平の紅葉。
圧倒的にキレイですね。
桜は里から山へ登っていくけれど、紅葉は山から里へ下りてきます。
栃木の紅葉はまだまだ楽しめそうです。