コピーライターの左ポケット

左のポケットからは
思いがけないものがでてきます
役に立たないけれど捨てられない
自分にだけたいせつなものです

「コピーライターの左ポケット」は
RADIO BERRY-76.4☆FM栃木の
日曜日22時からの番組「柴草玲のイヌラジ」の
小さなコーナーでした
コピーライターがストーリーを書き
柴草玲さんが音楽をつけながら朗読をしてくださり
5年の長きにわたって続けることができました
番組の最終回は2015年3月29日でした
お聴きくださった皆さま、このサイトを訪問してくださった皆さま
ありがとうございました

なお、原稿と音声のみをご覧になりたいかたは
裏ポケットへどうぞ ↓
http://02pk.seesaa.net/



2014年09月14日

太田祐美子 2014年9月14日放送

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ポトラッチ

        太田祐美子
        
ポトラッチ。
贈り物をされたとき、そのお礼として、
さらに高価なものをお互いに贈り合い続ける。
とある民族の儀式のことだ。

たとえば。
ある村の酋長が、隣の村の酋長の家に招かれたとき、
手みやげとして魚の干物を贈る。
そんなフランクな感じでポトラッチは始まる。

隣の村の酋長は、感謝の気持ちを示すために
いただいたものより高価なものをお返ししたいと考える。
そして、干物のお礼に砂糖を贈ることにする。

そのお礼に、砂糖より高価なもの。ヒグマの毛皮が贈られる。
そのお礼のお礼に、銅のネックレスを贈る。
そのお礼のお礼のお礼として、ついに現金が贈られる。
酋長たちは負けず嫌いだったんだろう。
ポトラッチはさらに加熱する。
現金のお礼は、現金より高価なもの。
なんだ、なにがいい。
隣の村の酋長は、最愛の妻を贈ることを決意する。

人妻を贈られた酋長は、自分の家を焼き払う。
気が狂った訳ではない。大切なものを贈るどころか
それを破壊することで、返礼のさらなる高みを目指そうとしたのだ。

そのお礼は、もうひとつしかなかった。
ポトラッチ。最後には、自分の最も大切のもの。
自分の命すら差し出すこともあったという。


つきあって3年。
ピアス、財布、ネックレス、バッグ。
お互いの誕生日にプレゼントを贈り合ってきた。
そろそろ小箱がパカッとあいて、
暗黙の了解的に左手の薬指につけるアレが
贈られる頃合いなんじゃないの?
そう思っていたんだと思う。

彼が私にくれたものは、靴だった。
かわいいけど、うれしいけど。
私は大学の人類学の授業で学んだ、
ポトラッチのことを思い出していた。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/
タグ:太田祐美子
posted by ポケット社 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 番組原稿と音声 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする