コピーライターの左ポケット

左のポケットからは
思いがけないものがでてきます
役に立たないけれど捨てられない
自分にだけたいせつなものです

「コピーライターの左ポケット」は
RADIO BERRY-76.4☆FM栃木の
日曜日22時からの番組「柴草玲のイヌラジ」の
小さなコーナーでした
コピーライターがストーリーを書き
柴草玲さんが音楽をつけながら朗読をしてくださり
5年の長きにわたって続けることができました
番組の最終回は2015年3月29日でした
お聴きくださった皆さま、このサイトを訪問してくださった皆さま
ありがとうございました

なお、原稿と音声のみをご覧になりたいかたは
裏ポケットへどうぞ ↓
http://02pk.seesaa.net/



2014年02月23日

上田浩和 2014年2月23日放送

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わたしにも分からないんです。

             上田浩和

銃声がぱんぱんぱんって3回したんですよ。
そしたらパンが三つあったんです。そこに。
メロンパン、あんぱん、クリームパンの順番で。右から。
いや、あんぱん、クリームパン、メロンパンの順だったかな。
どっちでもいいんですけど。
クリームパンから食べたんですけど、
おいしかったですねえ。クリームの味がして。
あんぱんはあんの味がして、
メロンパンはメロンパンの味はしたんですけど、
メロンの味とはちょっと違うと思いました。
ちょうどヤマザキ春のパンまつりが始まった時期だったから、
デニッシュボウルもらえたんですけど、
その皿で食べたものはなにかといえば、
シチューなんですよ。パンじゃなかったんですよ。
なんだか夫に抱かれながら、
昔の恋人のこと思い出してるような背徳感から、
ヤマザキさんごめんなさいごめんなさいって、
メッカの方にむかって土下座してたら、
そこに銃声を聞きつけたという警察官が
自転車にのって現れたんです。メッカの方から。
「いま銃声が聞こえませんでしたか」とたずねる警察官が、
わたしには神様が警察官の格好をして
怒鳴り込んできたように見えて、答える前に逃げ出したんです。
逃げられたら追いかけたくなるものですよね。
それはカレーパンのカレーが辛いのと同じくらい明確なことです。
ぼくはあっさり捕まえられました。
捕まえられると抵抗したくなるのが人ですよね。
それはチョコチップメロンパンのチョコチップが甘いのと
同じくらい明確なことです。
わたしは隙をついて警察官の腰から拳銃を奪いました。
そしてなんでか知らないけど、
それで自分のこめかみを打ち抜きました。
たぶん神様に捕まるくらいなら死んで閻魔様の前に出たほうが
まだましだと咄嗟に判断したんだと思います。
ぱん!とひとつ銃声がしました。
そしたらわたしの頭のなかにパンが一つ現れたんです。
なんのパンだか分かります?
二食パンです。
左がクリームパンで、右がチョコレートパンです。
つまり、左脳がクリームで右脳がチョコになったってわけでして、
右半身をクリームに、左半身をチョコに制御されてる気分が
どんなものか分かりますか?
いやあ、それがねえ、わたしにも分からないんです。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/



タグ:上田浩和
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2014年02月16日

細川美和子 2014年2月16日放送

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ふじさん

          細川美和子

ふじさんは思っている
みんな、よく写真をとるなあと

あっちからも、こっちからも、
近くからも、遠くからも、
一日中、ひっきりなしに
だれかがふじさんにむけて
カメラをかまえている

ときどきは、高い空の上、飛行機の窓からも、
カメラをかまえているひともいる
よじよじ、のぼってきては、
ずいぶん接写して帰っていくひともいる

写真をとったみんなは、うれしそうだ
となりのだれかに見せたりしている
とおいだれかにメールしたりもしている

日本人は写真が好きだ
日本人はメールが好きだ
日本人はふじさんが大好きだ

だからふじさんは、
今日もできるだけじっと
動かないようにしている
写真にぶれてうつったりしないように
だれかに悲しい思いをさせないように


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/



タグ:細川美和子
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2014年02月11日

トチオトメとスカイベリー

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栃木って実はイチゴの生産量日本一なんですよ。
よく肥えた土地とキレイな水、
そして夏と冬、昼と夜の寒暖の差が大きいことが
イチゴを育てるのに適しているらしいんです。

栃木のイチゴの代表選手といえばトチオトメ。
甘さのなかにほどよい酸味をキープしているその味わいは
単に甘いだけのイチゴに差をつけていましたが
このほど、その後継者たるべきスカイベリーが登場しました。

スカイベリーはトチオトメより粒が大きく艶があります。
酸味と甘みのバランスも、先輩のトチオトメに見習っていい感じです。
上と下の写真をクリックするとそのサイトへ飛びますから
いっぺんご覧になってくださいね(さ)

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タグ:栃木 いちご
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2014年02月09日

栗田雅俊 2014年2月9日放送

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        栗田雅俊

「ぱ」を発見した男に著作権が与えられたのは24年前のことだった。
ぼくは過去に一度だけ、彼にインタビューをしたことがある。

「それは偶然だったのさ」と彼は言った。

「あの日、私は、くちびるを真一文字に結んでいたのさ。
まるで泣きべそを我慢する子どもみたいにさ。
そのときふと、くちびるに蚊が止まったのさ」
「蚊ですか」
「そう。蚊さ。ぼくは蚊を追い払おうと、
口の中の空気を破裂させるように息を解放したのさ。すると…」
「あの音が出たんですね?」
答えるかわりに穏やかな笑みを浮かべ、彼は言った。
「神のギフトは、予想もできない方向からやってくるのさ」。

あんなもの誰でも思いつくと人々は言った。
世紀の発明というものは、往々にしてシンプルに見える。
だが、シンプルな結果として、彼は世界有数の億万長者になった。

それ以降、「ぱ」をつかうたびに、
世界は、男に対し、莫大な著作権使用料を
支払わなければならなくなったからだ。

あるタレントは「きゃりーみゅみゅ」に改名を余儀なくされた。
昔はなんていったっけ。
気軽にその名前を呼ぶことさえ、いまは叶わない。

かつて「ぱっぱらぱー」という悪口もあった。
今その言葉を発することができるのは、富裕層の人々に限られている。
「ぱっぱらぱー」は、むしろ高貴さを表す単語として
広辞苑にものったという。

いちばん慌てたのはパチンコ業界だった。
なにしろ「ぱ」を看板として掲げるだけで、
目玉が飛び出るような額が飛んでいくのだ。
しかし彼らに「ぱ」を外す選択肢はありえなかった。
理由は言うまでもないだろう。
これをきっかけに業界は衰退の一途をたどった。

悲しいことが、ひとつだけある。
小さな子供が父親を呼ぶときでさえ、
多額の料金が発生するようになってしまったことだ。
だが、たとえそれがどんなに狂ったルールに見えようとも、
価値あるものに対価は支払われるべきだというのがぼくの考えだ。

この放送で使われた「ぱ」の数は12。
ぼくも、かなりの金額を支払わなければならないだろう。
だが価値あるものに対価は支払われるべきなのだ。


出演者情報:柴草玲 http://shibakusa.kokage.cc/



タグ:栗田雅俊
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2014年02月04日

キラキラネームのキラキラキャット

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ポケット社長いうところの
キラキラネームのキラキラキャットです。
胡留(うる)さんです。

この記事を参照。
http://01pk.seesaa.net/article/386892169.html

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posted by ポケット社 at 01:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | ポケット社通信 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月03日

氷の季節(栃木の冬 6)

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氷の季節です。
上の写真、光徳沼。下は湯滝。
ともに奥日光です。

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そして、こちら(下)は太郎次の滝。
前日光(鹿沼市)の温泉「つつじ湯」の近くにあります。

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こんな景色が温泉の近くにあるというのがうれしいです。

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古くなった。

最近、自分が古くなったと思う。
去年からぼくは自分の生まれ年の小銭を集めている。
正確に言うと、昭和50年製の100円玉、50円玉だ。
たった一年だけど、貯金箱はけっこう重くなった。
目隠しされたハルク・ホーガンにその貯金箱を持たせたら、
砲丸と間違えて投げてしまうかもしれない。
今の文章には二カ所間違いある。
一つは、ハルク・ホーガンは、名前のせいで勘違いされやすいのかもしれないが、
プロレスラーであって、砲丸投げの選手ではない。
そして二つ目は、いくら目を塞がれたからと言って、
誰も貯金箱を砲丸とは間違えないということだ。
それはどうでもいいんだけど、
自分の生まれ年の100円玉と50円玉を見つける度に
うれしくなる反面、なんて汚いんだろうと思ってしまう。
昭和50年製の小銭と平成製の小銭は、手にした瞬間区別がつく。
輝きが全然違うのだ。
50年製のほうは、100円玉にしろ50円玉にしろ、
刻まれた模様のすみずみまで黒ずんでおり全体的にくすんでいる。
30年以上、人の手から手を渡り歩いてきたんだから仕方ないけど、
その薄汚れた感じが、そのままぼくの古さみたいでちょっと物悲しくなる。
それに比べて平成生まれの100円玉と50円玉の美しさといったら。
キラキラしている。まだまだできたてだ。
夢を尋ねたら、1万円札になることです!と目を輝かせて言い出しそうである。
昭和製の小銭に同じように夢を尋ねたらなんと言うだろう。
想像もつかない。
夢? なんですかそれ? 新しい日本酒の名前ですか?
なんてことを酒臭い息を吐きながら言ったりするのだろうか。

クララ。という名前の後輩がいる。もちろん女性だ。
その子が新入社員のときに自己紹介をされたときは驚いた。
だって純日本人の顔なんですもの。
ハーフでもなんでもないんですもの。
それが、ぼくにとってのはじめてのキラキラネーム体験だった。
そのクララももう7年目くらいになったのだろうか。
新入社員の名前もずいぶん様変わりしたことだろう。
キラキラしてないほうが珍しいくらいかもしれない。
いや、まだ、そこまでないか。
でも、あと数年もしたら、新入社員のほとんどの名前は
キラキラしているに違いない。
そんなキラキラネームと自分の名前を比べたときも、
ぼくは自分の古さを感じる。
初対面の人に口頭で自分の名前を説明するとき、
「皇太子の浩宮さまの浩に、昭和の和です」と言うとき、
ぼくの頭のなかにはいつも零戦が飛ぶし、
キノコ雲が浮かぶし、三億事件の犯人のあの写真が浮かぶ。
戦争も三億円事件もリアルタイムでは知らない世代だが、
自分の名前にしみついた昭和はそれらを呼び起こす。
ぼくって新しいものと比べたら古いんだなあ。

中山さんの猫の名前も胡留(うる)と言うらしい。
キラキラしている。
まだ胡留に会ったことはないが、
会ったらその輝きにぼくの後ろには濃い影ができるに違いない。
会う機会があったら、日焼け止めを塗っていこうと思う。
古くなった肌に強烈な光はシミの原因になる。
こんな話しをすると、中山さんは
「あんたなんかまだまだ新しいわい!」と言って怒るかもしれない。
「わたしが生まれた頃の小銭なんて和同開珎だったわい!」
なんて言って。(う)
posted by ポケット社 at 16:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ポケット社通信 | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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